宅地建物取引業は、不動産市場において中心的な役割を果たす業界です。「宅地」とは、建物が建設される予定、またはすでに建設されている土地のことを指します。この土地は居住用、商業用など、さまざまな目的で利用されます。「建物」とは、住宅、オフィスビル、商業施設など、人が使用するために建設された構造物を意味します。そして、「取引」とは、これらの宅地や建物の売買、賃貸などの契約行為全般を指し、不動産を対象とした経済活動の基本です。「業」とは、これらの取引を仲介または代理することを専門とする事業のことを指し、宅地建物取引業者は国からの免許を必要とします。この業務には専門知識が求められ、信頼性や透明性が業界の基盤となっています。
「宅地」「建物」「取引」「業」とは
「宅地建物取引業」を開始するには、通常、免許が必要となります。この業種は、宅地や建物の取引を事業として行うことを意味します。しかし、「宅地」や「建物」の「取引」を行っていても、それが「業」、つまり事業として行われていなければ、免許は不要です。同様に、「宅地」や「建物」以外のものを「取引」する事業を行っている場合や、「取引」を事業として行っているが、その対象が「宅地」や「建物」でない場合も、免許は不要です。各用語の具体的な意味を理解し、適切に判断することで、免許が必要かどうかを判断できます。
「宅地」とは
「宅地」とは、建物を建設するために用いられる土地のことを指します。この用語は不動産業界で一般的に使われ、住宅や商業施設などの建築が可能な土地を意味するため、都市計画や土地利用の文脈で頻繁に登場します。具体的には次の3つです。
現在建物が建っている土地
建物が存在する土地は、その建物の用途や位置にかかわらず、一律に「宅地」と分類されます。
建物を建てる目的で取り引きする土地
宅地は将来的に建物を建てる目的で取引される場合に該当します。登記簿上の地目が何であっても、その土地が建物を建てるために利用されるならば「宅地」として扱われます。例えば山林であっても、将来的に建物を建てる目的で取引される場合は、「宅地」として扱われることになります。
用途地域内の土地
用途地域内の土地が「宅地」に該当する条件を詳しく説明いたします。
- 建物が建っていなくても宅地に該当するケース
用途地域内の土地は、建物が建っていなくても、原則として「宅地」に該当します。つまり、土地の登記簿上の地目が何であれ、将来的に建物を建てる目的で取引される場合は「宅地」として扱われます。例えば、山林であっても、将来的に建物を建てる目的で取引される場合は、「宅地」として扱われることになります。
- 建物を建てる目的がなくても宅地に該当するケース
用途地域内であっても、建物を建てる目的がない場合でも、原則として「宅地」に該当します。例えば、土地を保有しているが、建物を建てる予定がない場合でも、その土地は「宅地」として扱われます。このような場合、宅地建物取引業法上の宅地に該当します。
要するに、用途地域内の土地は、建物の有無や建設予定の有無に関わらず、基本的に「宅地」として扱われることを覚えておいてください。
「建物」とは
建物についての一般的な定義
建物は、土地に定着する工作物のうちで、屋根、柱、または壁を有するもの、事務所、店舗、興行場、倉庫、その他これらに類する施設を指します。ただし、建築設備は除かれます。
会員権と建物の関連性
- 会員権は、共有会員制のリゾートクラブや宿泊施設などで見られる形態です。会員は、特定の施設を利用できる権利を持っています。この場合、会員が建物を所有している状態です。
- 一方、建物の所有権を持たずに、施設を利用する権利だけを持つ場合は、「利用権」となります。利用権の場合、会員は建物を所有しているわけではなく、宅建業法の対象ではありません。
宅建業法における「建物」の定義
宅建業法においては、特に「建物」の定義は規定されていませんが、基本的には建築基準法の建築物と同様です。住宅や事務所、店舗、工場、倉庫など、柱・壁・屋根のある建築物が該当します。また、マンションの一室についても1つの建物として扱われます。
「取引」とは
自ら売買
「自ら売買」とは、個人が自己所有の宅地または建物を直接売買する行為を指します。具体的には、以下のケースが該当します
- 自分の土地や家屋を他の個人に売却する場合。
- 自分の土地や家屋を他の個人から購入する場合。
このような取引は、宅地建物取引業法上の「宅地建物取引業」に該当します。
自ら交換
自ら交換」とは、個人が自己所有の宅地または建物を直接別の宅地または建物と交換する行為を指します。具体的には、以下のケースが該当します
- 自分の土地を別の土地と交換する場合。
- 自分の家屋を別の家屋と交換する場合。
このような取引も、宅地建物取引業法上の「宅地建物取引業」に該当します。
自ら貸借と宅建業法
自ら貸借(自分が貸主となる貸借)が宅地建物取引業に当たらないことから、宅建業者が自ら貸借(賃貸)をするときは宅建業法の規制が及ばないと考えられています。
よって、宅建業者が自ら貸借をするときは、重要事項説明、重要事項説明書の交付、契約書面の交付を行わなくても宅建業法に違反しないことになるのです。
「業」とは
「業」とは、不特定多数の人に対して反復継続して取引を行うことを指します。
具体的には、宅地建物取引業者が自ら売買や交換を行う場合、または他の人々の売買や交換の代理や媒介をする場合に「業」となります。
例えば、分譲の場合は不特定多数の人に対して反復継続して自ら売買を行うことを意味し、「取引」「業」ともに要件を満たします。
ただし、「もっぱら自分の社員のため」のような「特定」の相手の場合は、「業」とはみなされません。
免許不要の例外
信託会社・信託銀行
信託業法により一定の免許を受けた信託会社や信託業務を兼営する金融機関(信託銀行など)は、国土交通大臣の免許を受けた宅地建物取引業者とみなされます。
ただし、宅建業を営もうとする場合には、国土交通大臣に届出をする必要があります。
国・地方公共団体
国(または都市再生機構)や地方公共団体(または地方住宅供給公社)には、宅建業法は適用されません。そのため、本来なら宅建業とみなされ免許を受けていなければ行えない取引も、免許不要で行うことができます。
破産管財人
個人や法人が自己破産を申立てた場合に、財産や財団の換価を行う際、破産管財人は自ら売主となって売買取引を行います。この破産管財人の取引行為は、破産法に則して裁判所の監督下で行われるため、宅建業とはみなされません。そのため、反復継続して行う場合も免許は必要ありません。これらが、「免許不要の例外」に該当するケースです。
宅地建物取引業の「宅地」「建物」「取引」「業」まとめ
- 宅地
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一般的には建物の敷地に供せられる土地を指す1。具体的には、以下のいずれかに該当するもの。現に建物の敷地に供せられている土地、建物を建てる目的で取引する土地(現況や登記簿上の地目は問わない)、用途地域内の土地(現に公園、広場、水路、河川、道路等公共の用に供せられている土地を除く)。
- 建物
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土地に定着する建造物(工作物)のうち、屋根および周壁を有するもの2。日本の民法の下では、「建物は、土地とは別個の不動産」とされている。
- 取引
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契約や合意などのもとに、金品や事柄のやり取りを行うこと。
- 業
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反復継続性と事業的規模の両方を満たすものを対象とする。行為が反復継続的に遂行されているものと社会通念上『事業の遂行』とみることができる程度のものである。